≪My Dear≫

 

腕の中で眠る、優しい温もりを起こさないように注意しながら、ベッドの横にある小さな机の上に手を伸ばした。
ぼんやりとスタンドの明かりの中に浮かんだソレに、思わず笑みがこぼれた。

手の中にある、小さなクマのマスコット。
俺の誕生日の為に、啓太が作ってくれたものだ。
飾り紐が付いていて、携帯電話のストラップになるようになっている。

初めて作ったせいだろうが縫い目は雑だし、少し歪なクマのマスコットは、どことなく笑っているようにも見えるし、泣いているようにも見える。
そのクマの表情を見ながら、何故だか涙がこぼれそうになった。

幼い頃から人の上に立つことを教えられて、ちょっとやそっとの事では驚かないように育てられた。
大勢の人を統率する立場上、意味のない感情の起伏や動揺とは無縁の生活を強いられた。
もちろん相手とのコミュニケーションを取る為に、大げさに驚いたり喜んで見せることも必要だ。
パフォーマンスとしてそういう事はしても、どんな時でも常に平静でいられるようにと、自らも心がけて来たのだった。

欲しいものなら何でも手に入ったし、そうした生活に不自由を感じたことはない。
でも、いつもどこか寂しくて、ずっと探していたものがあった。
もう随分と昔に、啓太と出会って別れてから探しつづけていたもの。
それが何だったのか、言葉では上手く説明出来ないけれど、今は判るような気がする。
まるでパズルのピースを填めるみたいに、心の中の隙間がピッタリと埋まったみたいだ。
こんなにも愛しい存在があるなんて、去年の誕生日にはまだ知らなかった。
啓太がくれたストラップを握り締めるだけで、幸せな気持ちで満たされていく。
どんなに高価な贈り物よりも素敵な、俺の大事な宝物だ。

スタンドの明かりが眩しいのか、啓太がころんと寝返りをうった。
肩を冷やさないように、上掛けを掛け直してやると、再び俺の方に寝返って頭を摺り寄せてきた。
こういう所は昔と変わらない。
愛しくて、どうしていいのか判らなくなってしまいそうだ。

 

東の空がぼんやりと明るくなってきた。
それでも夜明けまではまだ暫くあるだろう。
啓太があんまり可愛いことをするもんだから、つい嬉しくて、こんな時間まで寝かせてやれなかった。
起きられるようになるまで、まだ随分時間があるだろう。

啓太が目覚める瞬間も見つめていたいから、そろそろ俺も眠った方がいいだろう。
スタンドの明かりを落として部屋を暗くすると、すぐに心地よい眠りがやってくる。
目覚めたら昼になっているだろうから、ブランチをとって二人で浜辺を散歩するのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら、俺もいつしか心地よい眠りに落ちていった。

 

END


June 5 えぞももんがぁ
遠藤和希同盟に捧げる、和希お誕生日SSです。とっても短いです(^^;)
和希のお誕生日に、啓太が手作りのクマちゃんストラップをあげた、という設定でお話が進んでます。同盟の皆さんに、気にいって頂けると嬉しいな♪

 

えぞももんがぁ様のサイトはこちら

トップへもどる

投稿作品展示室へ